子宮頸がんについて

子宮頸がんという病気はご存知でしょうか?

子宮頸部という、子宮の出口の部分に発生する「がん」であり、20-40歳代の若い人に発生することもある病気です。

子宮頸がんと子宮体がん

子宮頸がんは原因が解明されており、子宮頸部のヒトパピローマウィルス(HPV)の持続感染によって起こると言われています。
このページでは子宮頸がんについての基本事項を解説します。

  1. 日本での子宮頸がんの動向について
  2. ヒトパピローマウィルスの感染経路、感染するとどうなるの?
  3. 日本の子宮頸がんの原因となっているHPVの型は?
  4. ヒトパピローマウィルスの感染と子宮頸がんの関係まとめ

1.ヒトパピローマウィルス(HPV)の感染経路、感染するとどうなるの?

日本では、毎年約1万人が子宮頸がんになり、毎年約2900人が子宮頸がんで死亡しています。
子宮頸がんの死亡者数はやや上昇傾向にあり、罹患者数はほぼ横ばいといったところです1)

子宮頸がんの罹患者数

子宮頸がんの罹患者数

また、子宮頸がんは20-40歳代の女性に多く発生しています。下のグラフは2014年の日本における年齢別の子宮頸がんの罹患数と死亡数を表します。

年齢別子宮頸がん罹患数(2014年)

年齢別子宮頸がん死亡数(2014年)

グラフは2014年のデータですが、この10年間で、子宮頸がんによって20-49歳の若い女性が、毎年約550人死亡しているというデータがあります1)

2.日本での子宮頸がんの動向について

HPVは性交渉によって感染します。HPVには100種類以上の「型」があり、がんを発生させる高リスク型と、イボや良性腫瘍などの原因となる低リスク型に分けられます。

 高リスク型  16, 18, 31, 33, 35, 45, 52, 58型など
 低リスク型  6, 11型など

HPVはありふれたウィルスであり、性交渉をしたことがあれば口や性器を介して感染している可能性があります。
コンドームを使用しても完全には感染を防げません。そのため、性交渉をしたことがある女性の50-80%に、生涯で一度はHPVの感染歴があるという報告もあります。
それではHPVに感染した細胞は、どのように癌化していくのでしょうか。

まず、性交渉によって子宮頸部の細胞にHPVが感染します。HPVが感染するとウィルスが細胞の中に共存する状態となります。これを軽度異形成と呼びます。
HPVは90%の人で2年以内に自分の免疫によって自然排除され、軽度異形成となった細胞も正常細胞に戻ります。
10%の人が、HPV排除ができず細胞に持続感染することになります。するとHPVのDNAが細胞に取り込まれた状態となります。この状態を中等度から高度異形成と呼びます。
この状態が数ヶ月から数年続くと、異形成細胞はがん細胞へと進行します。

HPV感染から癌化までの過程

高リスク型のHPV感染者のうち、1%程度の人が、がん細胞まで進行してしまうと言われています。

3.日本の子宮頸がんの原因となっているHPVの型は?

子宮頸がんは、扁平上皮癌と腺癌に分けられ、扁平上皮癌の100%、腺癌の90%以上からHPVが検出されると言われています。
つまり、子宮頸がんのほとんどがHPV感染が原因であると考えられます。

日本人の子宮頸がんからは、HPV16型、18型が検出されることが多く、2つを合わせると65%に上ると報告されています2)
日本の若い人の子宮頸がんからはHPV16型、18型が特に多く検出されており、20歳代の子宮頸がんの90%、30歳代の子宮頸がんの76%にも上ります。
HPV 16型に感染すると、感染して10年間で20.7%もの確率で高度異形成までの進行が見られたとする報告があります3)。 この報告の中で、HPV18型の感染でも17.7%と高い確率で高度異形成まで進行したとされています。
現在発売されているワクチンは、どれもHPV16型、18型の感染を防げるようになっており、ワクチンの普及で、日本人の子宮頸がんの約70%が消失すると推定されます。
HPV16型、18型は子宮頸がん以外にも、外陰がん、腟がん、肛門がん、咽頭がんの原因となることが判明しており、ワクチンでHPV16型、18型の感染を予防すれば、これら他のがん予防にもなることが予想されます。
ワクチン接種ではなく、検診で細胞を何度も採取することで、早期に発見する手段もありますが、細胞の検査は見逃しや過剰診断となることもあり、確実な方法とは言えません。
また、子宮頸がん検診で細胞を採取して調べても、早期発見はできるかもしれませんが、HPV感染そのものを防ぐわけではないため、子宮頸がん自体はこれまで通り約1万人/年発生してしまいます。

根本的に子宮頸がんを防ぐ手段としては、HPVワクチンが最も有効と考えられるでしょう。

4.ヒトパピローマウィルスの感染と子宮頸がんの関係まとめ

  • 子宮頸がんは20-40歳代に多く発生する。
  • 子宮頸がんの原因はほとんどが性交渉でのHPV感染。
  • 日本の子宮頸がんの原因のほとんどはHPV16型、18型。
  • HPVワクチン接種は子宮頸がんの発生を減少させ得る。
  • HPVワクチンは子宮頸がん以外のがん(腟がん、肛門がんなど)も防ぐ効果がある。

-参考文献-

(1) Hori M, Matsuda T, Shibata A, KatanodaK, SobueT, Nishimoto H, et al. Cancer incidence and incidence rates in Japan in 2009: a study of 32 population-based cancer registries for the Monitoring of Cancer Incidence in Japan (MCIJ) project. Japanese journal of clinical oncology. 2015;45(9):884-91.
(2) Onuki M, et al: Human papillomavirus infections among Japanese women: age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer. Cancer Sci 2009; 100: 1312-1316.
(3) Khan MJ, et al. The elevated10-yearrisk ofcervical precancerand cancerin womenwith human papillomavirus(HPV) type16or 18and the possibleutilityof type-specificHPVtestingin clinical practice. J Natl Cancer Inst. 2005; 97: 1072-9

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